目的と戦略をデザイナーに伝えればデザインは作れなくはないのですが、伝え方によってはデザイナーがデザインを作るのに時間が掛かったり、意図したデザインになっていないといった事が発生します。
伝えたつもり、わかったつもりがデザインに影響する
「つもり」というのは自分自身でも気づきにくく伝えたことや聞いたことが「つもり」になる事はよくあります。
例えばホテルなどのweb制作プロジェクトなどであれば「予約数を増やす事が目的」と伝えたとします。
この場合デザイナーはビジュアルデザインを作る際に「予約数を増やす事が目的」を意図してデザインを作りますが、この情報だけではデザインを作る際にデザイナーの主観が多くなります。
なぜなら、「予約数を増やす事が目的」という情報しかインプットがないからです。
情報がなければデザイナーは自分の経験と主観でデザインを作らざる得ません。
これでステークホルダーが納得すれば良いですが往々にして納得しない事がほとんどです。
デザイナーに目的を伝えた側は目的を伝えたつもりになっていて本来であれば「予約数を増やす」事になった経緯が多くあるはずなんですが、その経緯などを伝えていない事が多くあります。
また、デザイナーも「予約数を増やす事が目的」といったときに、「予約数を増やす事が目的だったら、こうすれば良いかな」と自分の中で勝手に納得してしまい問いを発しない事が多くあります。
前述した内容は当たり前のように思えますが、デザイナーでない人は、当然どんな情報があればデザインができるのかがわかっていない事が多く、デザイナーでもこの事を理解していないでデザインを作る人も少なからずいます。
デザイナーがデザインを作りやすい状況とは
デザイナーがデザインを作りやすい状況とはデザインを作る際に必要な情報が揃っているということですが、具体的に挙げると下記の様な感じになります。
1.目的
webサイトを作る、またはリニューアルする目的を確認することにより大体のゴールを確認することができます。
ただ、これだけでは前述のようにデザインに落とし込むには情報が足りません。
2.その目的になった背景
目的の背景を知ることで、課題やこれまでどんな施策を行ってきたのかクライアントの現在の状況を知る事ができます。
ヒアリングの中でも最も注意して聞くべきポイントです。
なぜならクライアントの現在の状況を知る事でほとんどのデザインのクオリティが決まるからです。
誰にどんな風にどんなタイミングでデザインをとおしてコミュニケーションをするのか、この内容で決まります。
3.どんな人がどんな時にそのサービスやプロダクトを使用するのか
上記の「誰にどんな風に」を深ぼる事ですが、ユーザーの価値観を理解し、どんなサービスやコンテンツを提供するとユーザーに役に立つ情報を提供できるかを知る事で情報に優先度がつけられデザインの意図ができてきます。
実際にユーザーを調査したドキュメントなどがあると、ステークホルダーが何をサービスとして、どんな価値を提供しないといけないか目指すべきビジョンの共有ができます。
4.サイトマップ
webサイトで、どんな情報をユーザーに提供するか俯瞰できます。
一般的によくあるのは、どんなコンテンツがあるかを書いただけのものが多いのですが、それだけでなく各ページのCTAは何なのか、web戦略に対して、各コンテンツがどんな役割を果たすのか、優先度はどのコンテンツが高いのかまで俯瞰できるとデザイナーはデザインに強弱をつけやすくなり、どんな情報をバナーなどで提供しないといけないのかイメージがしやすくなります。
webのレイアウトに関しても、何を見せないといけないのか優先度がつくと手が動かしやすくなります。
5.デザインの雰囲気(トーン)
商品やコーポレートのブランドカラーなどがあるとある程度、webのデザインのトーンは決まります。
ない場合はどんなトーンが良いだけを聞くのでなく、「このトーンはタブー」などの情報を事前にまとめているとデザイナーは手を動かしやすくなります。
イメージのズレがクライアントと大きそうな場合はいきなり全てを作るのではなく、部分だけ作ってクライアントと意思疎通を図るとズレがすくなくなります。
まとめると、クライアントとお話をしているプランナーやディレクターが、これまで話してきた内容をもう一度デザイナーに共有するということです。
勿論、クライアントと直接お話して提案するデザイナーの方など、環境によってそれぞれだと思います。
情報が具体的であるほどデザインがしやすい
上記から言えることはプロジェクトで集まった情報を整理して、具体的な情報に変換できるか。そしてそれを視覚化できるか。
これができない時にデザイナーが悩んだり、的を外したデザインになったり、抽象的なデザインになったりします。
勿論、情報が整理できていないのでデザインの意図もあやふやなものになります。
情報の収集や整理ができてないほどデザインに時間がかかる
どれだけデザインツールを使うのに長けているデザイナーでも、デザインを作る際に必要な情報がなければ写真を選定するにせよ形を作るにしても意思決定に時間がかかってしまいます。何が良くて何が悪いのかを判断するのは目的であり、その目的になった背景です。
それらの情報が共有されてなければデザイナーの主観にならざる得ません。
このことからデザインにかかる時間も推測できます。
情報の整理ができていないものをデザインするとなれば作る時間も当然時間がかかります。
デザインの細部にこだわる事がクオリティを上げる
余白の大きさであったり、フォントの大きさ、フォントの選定、オブジェクトの形などデザイナーはデザインを作る過程で、作っては変えて、作っては変えてと最適なビジュアルを探ります。
全てを作り終えた後も、全体を通して違和感がないか、もう少し良くすることはできないかといった視点でデザインを見ていきます。
ですが、そもそも情報が整理されていないと、そこに時間を取ることになります。勿論、情報整理の時間を考慮しデザインの制作時間がスケジュールされていれば問題ないですが、多くの方がこの情報を整理する事があるということすら知っていない事が多いです。
目的や戦略などこれまでの情報を整理する事でデザイナーは手を動かしやすく、効率的に仕事ができやすくなります。
そして、見た目の部分をブラッシュアップする時間を取る事ができます。
この情報設計がデザイナーがデザインする際に言語化できていない、いブラックボックス化されている部分でもあると思います。
これまでにデザインに時間がかかる理由を見ていると、ほとんどがこの意思決定の材料が足りない事です。
クオリティを上げるにはスキルも必要ですが事前にこういった情報の整理がそもそもクオリティをあげる要素になります。