よく言われる「生産性を上げる」ということは技術力と経験などがあれば上がると思われていることが多分にあります。
確かに、技術力や経験によるところもあるのですがデザイン(ビジュアルデザイン)に至ってはそれだけでは終わりません。
このあたりがデザインの知識や経験がないとマネジメントしかねるところでもあります。
デザイナーの生産性を低下させる隠れた要素。ビジュアルデザインを作る意思決定の時間
「ヘッダーに置くナビゲーションの情報はどうしようか?」
「ナビゲーションのラベルの付け方はこれで良いだろうか?」
「メインビジュアルで見せるものは何を見せるべきか?」
「キャッチコピーはどんな装飾をして、どんな大きさにしようか?」
「フォントはどんな感じのフォントにしようか?」
「どんな雰囲気(トーン・マナー)にしようか?」
「ボタンの形や色はどんな感じにしようか?」
「見出しのビジュアルはどうしようか?」
「バナーはどの位置にどんな大きさで、どんなコピーをいれて作ろうか?」
ツールで作る、創造する意外に上記の様な意思決定の時間があります。
つまり意思決定をする際の判断の答えを探す時間があります。
ツールを使って手を動かすというのは、そんなに時間がかかることではないのです。
デザイナーの意思決定を早めるためには何をするべきか
システムを作る時には要件を詰めます。「こういうインプットがあって最終的にはこういうアウトプットを」など。
ビジュアルデザインはどうなのか?
ほとんど要件を詰めません。これがデザイナーの意思決定を遅らせ生産性を下げる一つの要因です。
後になって、「そこは、こうして」と指示を受けるのは、デザイナーとクライアントで共通のビジュアルデザインの要件が決まっていないからです。
ビジュアルデザインの要件とは何か?
基本は「いつ」「誰が」「どこで」「何を」「どのように」サービスを利用するのかを決めることです。
こんな風に書くと簡単に思えるのですが、そんなに単純にはいきません。
例えば「誰が」の部分。「キレイ好きのお父さん」だけでは全くデザイナーには伝わりません。
「休みの日でも時間があれば、どんなに疲れていても草むしりや、ほうきを持って掃除をするお父さん。
愛車の洗車も毎週するほど。そんなお父さんの楽しみは、掃除してお腹が空いても一杯のビールのうまさの為に間食は一切しないでビールを飲むこと。」
「キレイ好きのお父さん」だけデザイナーに伝えるのと上記の様に伝えるのではビジュアルデザインで意思決定の際に判断する情報の量が全く異なります。
「キレイ好きのお父さん」だけで終わると、何をもってキレイ好きとするのかクライアントとデザイナー間で大きなギャップが生まれます。
このギャップが後にデザインの違いを生み出していき、クライアントから「デザインが思ってたのと違う」と言われる原因になります。
ビジュアルデザインの要件を詰めるには?
ビジュアルデザインの要件を詰めるには、まずサービスを利用するユーザーを細かく定義すること。
細かく定義することで情報の優先度が決まり、何を目立たせるべきなのか、どこに配置すべきものなのかというデザイナーの意思決定を支援するものになります。
ユーザーを定義するというのは下記のような要素です。
ユーザーのステークホルダー
サービスを利用する際ユーザーの意思決定に関わる人たちはどんな人がいるのか。ステークホルダーの中でユーザーはどんな立場なのか。
ユーザーのコンテキスト、価値観、特徴
ユーザーは普段どんな生活をしていて、どんなサービスを提供する事で価値を感じるのか。
サービス提供者がしてもらいたい事とユーザーの価値を結び付ける。
情報のプライオリティ(優先度)
ユーザーにとって価値のある情報は何か?
ユーザーの行動
ユーザーはどんな情報を探し、どんな行動するのか。
ユーザーのゴール
サービスを通して、ユーザーとステークホルダーが、どんなこと(ゴール)を達成したいのか。
デザイナーの生産性を上げるにはツールのスキル以外に意思決定の支援を
デザイナーやディレクターやクライアントのビジュアルデザインに関わる意思決定の情報はすり合わせをしておく。
「何を良い」として「何を悪い」とするのかこれがすり合わせできていないとビジュアルデザインを作成する際にデザイナーが考える時間が増えます。
つまり手が止まる時間が増えます。
往々としてあるのがクライアントとディレクターや営業では細かい情報を共有していてデザイナーには簡潔に情報を提供すること。
これでは、デザイナーは何が良くて何が悪いのかというのが判断しづらくなり意思決定に時間がかかります。
しっかりと細やかな情報をデザイナーに提供して良い悪いのすり合わせを行うのがデザイナーの生産性を上げる隠れた要素になります。
デザイナーもまた、情報を取得しに行く姿勢が必要です。