宮崎のデザインの考察「JR日南線利用促進 観光ガイドブック」

  • 「何かお洒落な冊子がある!」そう思って手に取ったのが、今回のこの冊子。
    どこの写真なのか、わからずとりあえず手に取った。
    中身をパラパラめくったら観光案内の冊子で宮崎県日南市の観光案内冊子。

    通常であれば、こういった冊子は大きく地名が掲載されているのがほとんどですが、今回の冊子は英語のみ。
    「OLDIES? BUT GOODIES!」
    このキャッチコピーは調べてみると1961年のアメリカにて発売されたコンピレーション・アルバムの名前が最初で、古いけど良い音楽という意味があった。
    今回の宮崎県日南市のこの冊子は恐らく古いけど良い町という意味が込められているのかと思います。

    デザインには論理だけでなくエモーショナル(感情的)も必要

    どこの場所なのか気にせずとりあえず手に取った理由として冊子の写真とデザインがお洒落だったから。
    自分自身、写真の場所は気にせず手に取っている。見た目だけで行動に移ったわけですが、これがまさに論理的なデザインでなくエモーショナルなデザインの力です。世間でいうジャケ買いと似たような感じです。
    デザインは目的のために何かを目立たせたり、情報をどうみせるかという所の戦略をたてたりしますが、感情に響くビジュアルを作るのも重要な要素です。
    消費行動モデルのAIDMA、AISASの最初のAttention(認知)がこのエモーショナルなデザインが最も働きかける所になります。写真だけでなく文字もその一つの要素です。

    キャッチコピーも文字通り歴史のあるフォント

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    「古いけど良い」にあったフォントをデザイナーの方は選んだと思います。使用されているフォントは恐らくTrajan(トレイジャン)
    Trajan(トレイジャン)フォントの始まりは約2,000年前とかなり歴史のあるフォント。文字の記号部分「?」や「!」の部分が特徴的な形をいています。
    歴史あるこのフォントがキャッチコピーの「古いけど良い」という意味とビジュアルがマッチして瞬時にその事が伝えられています。あくまで欧文フォントなので、伝統を感じるのは知っている人だけに限られるかもしれませんが。日本語を使用すれば伝統色を強く出せますが英語を使用しているから見た目がお洒落に見えるというのもあります。

    日本語のフォントは?

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    筆の後が割と残りつつも、行書、楷書まで堅くないレトロ感が上手にでているフォントが使用されています。
    こちらも推測になりますが恐らく「イマジン・ヨコハマフォント」が使用されているのではと。
    「の」や「わ」や「そ」が特に特徴的な形をしています。
    筆跡が少し残ることでレトロ感が演出されるフォントです。

    これらの文字と写真のイメージがマッチして見る人の一瞬に印象を与え、狙ったユーザーに見てもらえるか、手に取ってもらえるかが決まります。

    中身の内容は?

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    観光の写真集の様な構成。写真が大きく全ページ構成され、文字はかなり少なめ。なので難しい印象もなく取っつきやすい印象を与えるのではと。
    その分、個人的には若干情報が少ないのではと思う所も。例えば写真は掲載されているのですが、その場所の地図がない。駅から○○分というのはあるのですが、あくまで電車で行ってもらうというのが狙いで意図的に載せてないのかなとも思います。
    ページ冒頭には特急列車「海幸山幸」の案内も掲載されています。あまり知られていないのですが、海幸山幸のデザインは、ななつ星や九州新幹線のつばめをデザインした水戸岡 鋭治さんです。

    この冊子の目的

    冊子の発行元などを見れば一目瞭然なのですがJR日南線利用促進連絡協議会とJR宮崎総合鉄道事業部となっているので日南線の乗客や観光客を増やす事が目的だと推測されます。
    その為には「観光」を押し出して外部のお客さんに電車を利用してもらうという戦略のもとに制作されたのではと思います。どういうターゲットを狙って写真や観光場所を選んだまでは判断できないのですが、ここでもペルソナがしっかり作られているとどんな写真や情報を載せればいいのか意思決定が迅速にできます。

    戦略の一つ「注目」としてのデザインを使う

    先にも述べた消費行動モデルのAIDMA、AISASの最初のAttention(認知)が大事で、この部分がうまく働かないと、そもそも認知すらしてもえないです。
    書籍「Attention」では”1986年の人は1日平均、新聞約40部に相当する情報にさらされていて、それが2006年には、4倍以上の174部相当になった。”と書かれています。スマートフォンがある現代ではもっと多くの情報にさらされていると思います。
    情報発信も昔は地元新聞の編集部に手紙を書くしかなく、友達と写真を共有したければ、フィルムをカメラ屋に持ち込んで現像してもらい、人数分だけ焼きましして手渡すしかなかった。今日ではどんなものを共有するにもキーボードかタッチスクリーンがあれば事足りる世の中になっています。

    これだけ、情報が流れている中で普通に何か良い物を作ったとしても認知すらされない事も多いにあります。
    ですので、注目して認知してもらうというプロセスが昔以上に必要になり大事なプロセスになります。
    今回のこの冊子は、その意味では自分にとっては手に取るくらい注目をした冊子でした。

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