画像引用:amazon老舗を再生させた十三代が どうしても伝えたい 小さな会社の生きる道
「ブランドを作る」事が終始詳しく書かれている本。
ブランディング、ブランドマネジメントなど言葉を聞けば煌びやかなイメージを持ちそうですが実際は経営からデザインまでの泥臭い作業で本書では事例をもとに、その過程が描かれています。
理論でなく経験をもとに書かれているところが、非常に面白く学びやすかったです。
著者は今では有名な奈良の中川政七商店の代表である中川淳さん。2017年年度の新卒採用では数千名のエントリーがされる人気の企業です。
印象に残ったのは下記の部分
全ては決算書からはじまる
会社の状況がわからなければ、何か施策をしても行き当たりばったりの結果になります。
どこをどういう順番で施策を実行すれば経営が改善されるのか、会社の診断がとても重要。
外部要因が絡むものでなくまずは内部要因に目を向けると最も改善が行いやすいというの頷ける内容でした。
内部要因というのは例えば社内での生産性や効率化など。
外部要因は確かに予測できない所が多いので成果に結びつくのに時間がかかる感覚があります。
ブランディングのポイントは差別化と正しく伝える事とらしさ
差別化
自社はどんな所が強いのか、他社と比較して強みは何なのか、この強みが差別化に繋がると思います。
本書では強みについての考察が面白く、強みがなければ視野を広げて探すという捉え方が記載してあります。
”自分たちをどう定義するかで強みは変わる”会社単位での強みでなく地域単位に視野を広げるなど。
考えてみると「日本製」というのも視点を変えただけで定義次第で強みに変わることはたくさんあります。
強みは何かをデザインする上で最も押し出さなければいけないもの。デザインを形作るうえでのコミュニケーションのスキルに役立つ内容だと思います。
正しく伝える事
競合他社など考慮し、「誰に」「何を」「どのように」伝えれば良いのか。
「強み」や「なぜ」やるのかなどを考えながらやると伝える事は何なのかイメージしやすいのかと思います。
らしさ
ブランディングの本には必ずといっていいほどでてくる「らしさ」
本書では「らしさ」以外にも、まず経営者の方の「どうなりたいのか?」「どんな会社にしたいのか?」を尊重する考え方が記載されていて思わず頷く所が多々ありました。
ブランドを作る上で中心となる人物が何事も納得していなければ、ブランディングが成功するはずがない。
ネーミングや言葉一つ一つ、丁寧に。その細かさが「らしさ」に反映されるのだと思います。
グラフィックデザインは、格好をよくすることが目的ではない。伝えたいことをより正確に伝えるためのものである。
この言葉至極シンプルに表現してるなぁと頭の中にずっと残っているのですが。
webデザインのビジュアルにしろグラフィックにしろ見た目の部分はまさにこれに尽きると思います。
伝えたいことをより正確に伝えるためにはクライアントとデザイナーのコミュニケーションの質がよくなければできない。
コミュニケーションの質を分解するとそれは問いの立て方であったり、解の導き出し方であると思います。
つまるところ、良質なアウトプットは良質なインプットがなければあり得ない。
所感
ブランディングを学ぶのに体系的に整理され非常にわかりやすい本でした。
ブランディングの本は理論的な本が多い中、実務ベースで書かれているのは非常に少ないと思います。
本書はその貴重な一冊ではないかと思います。