「デザイナーにデザインをお願いする時点での依頼は既に依頼者が考えたデザイン」であるということをデザイナーは考えておかなければいけない。
「こういう感じのポスターを作ってください!」「こんなホームページにお願いできますか?」と、このままデザインを作るのであればデザインというよりは制作のオペレーターである。
勿論これはこれで良いのだが依頼者がデザイナーの何に価値を感じて対価をデザイナーに支払うのか、ここを見誤ると依頼者とデザイナーのミスマッチが起きる。
制作としてのデザイナーかビジネスの設計まで含んだデザイナーなのか
制作だけのデザイナーのお仕事というのは、いわゆるクラウドソージング系のお仕事に多い。
バナーが欲しい、ランディングページが欲しい、チラシが欲しいのでデザイン制作をお願いしたいといったもの。
デザインのプレゼンテーションやデザインの意図まで含んだデザインとなるとビジネスの設計まで含んだデザイナーのお仕事になる。
これは大工さんに例えると、要求される家は作りました。というのと要求されるものを聞きつつ、どうしたら家で快適に過ごせるかを設計して家を作るのと同じだと思う。
例えば注文住宅ではコンセントの位置をどこにするか決めれるわけだが、正直素人にはどこにつけたら配線が目立たず快適に過ごせるのか検討がつかない。それでも依頼者が考えたここが良いだろうという位置に指示通りに家を作る。
では、家で過ごす人の生活を知った上でコンセントの位置を提案して作るとどうなるか?コンセントがあるだけでなく過ごしやすいといった価値が生まれる。
依頼者がデザイナーに最初にお願いする事はデザイナーに本当にして欲しい事ではない事が多い
例えばホームページのデザインリニューアルを少しだけしたいといった時に「ボタンを変えたい」といった場合、依頼者がデザイナーに本当にお願いしたいのはボタンを変える事ではない。
それは何かしらの背景があって依頼者が考えた最終的な手段をお願いしている状態であって、このまま制作だけ行うとホームページを制作するデザイナーは制作するだけとなる。
「なぜなら~」という意図を作るには依頼者がデザイナーにやってもらいたい事の過程を知る事
人は会話する際、無意識に要点をまとめて話をするので依頼する側は、その過程を話すことは少ない。
この過程にデザインの設計に関する事やデザインの意図になる事が含まれている。
単純に制作するだけなら「作りました。」で終わるが、なぜそのデザインになったのかを説明するとなると「なぜなら~」という事になる。
デザインの「なぜなら~」が作られるのは依頼者がデザイナーにやってもらいたい事の過程、つまりなぜその依頼をするのかを聞かない限りは「なぜなら~」という説得力のある意図は作れない。
デザインでなくても同じことが言えるわけだが、「卵焼き作ってください。」とお願いされて卵焼きを作ったとして甘い卵焼きを作ったとします。
この時に「なぜ?甘い卵焼きを作ったのですか?」と聞かれても「なぜなら~」とは言えません。
なぜ卵焼きを作ってくださいと頼んだのか過程を聞かなければ意図(設計)はできません。
過程を聞いていくと、ひょっとしたら卵焼きではなく、もっと最適な料理があるかもしれません。
それはデザインでも同じことがいえる。
どうすればデザインの価値を提供できるか?
どんなデザインにも共通しているのは、依頼者とのコミュニケーションの質にデザインの価値は影響される。
デザイナーは依頼者から依頼をいただいた時に
「それがあることによって何がどのように便利で、どのような問題が解決されるのか?」
都度問いを立てる事。
デザイナーの価値とは依頼者も気づいていない問題に気付けるか。それを実現するのはコミュニケーションの質であり、短期間で可視化(プロトタイプ化)できるスキルだと思う。
デザイナーはエンジニアの仕事とは異なって仕様を決めない事が多い
デザインは知識がなくても誰でも意見が述べれる。故に仕様がなければブレストの様になり際限のない意見があがる。そして声の大きな人の意見に決まる。
デザインにとって仕様とは依頼者の依頼の目的であり、背景である。
「こうだから、こうしないといけないよね」というコンセンサス(同意)を細かく得ることがデザインの仕様に繋がりデザインの価値をあげるものに繋がる。
「こうしないといけない」の具体的なアクションの価値は経験や知識の多さに比例する。
ともすれば、「どうしたら良いかわからない。」ともっと根幹的な所で依頼者が悩んでいる場合は更に経営的な視点で、本質的な課題の発見を見つける事がデザイナーのデザインの価値を提供できるものだと思う。
勿論、エモーショナルなアウトプットができるのもデザイナーの価値でもある。