画像引用:amazon 小倉昌男 経営学
ヤマト(宅急便)の元経営者、小倉昌男さんが戦前から戦後、平成までの経営について書かれた本。
現在は当たり前の様に個人や企業の荷物を運んでいますが、昭和初期は個人間の荷物の配送は郵便局だけでした。
民間企業が個人宅まで荷物を取りに行って配送するというのは、コストがかかるのが目に見えていたのですが、そこに勝ち目があると経営者の小倉さんは個人間の荷物の配送サービスを始めます。
サービスを始める前、始めた後も当時の国の法律の規制が何度もありながら、収益を上げていったヤマトの背景や歴史がとても面白い本でした。
本の序盤は個人間の荷物の配送を始める前、最大の取引先であった当時の三越について、よく書籍にここまで書けたというくらいの悪い契約だった事が書かれてます。
下記は印象に残ったところです。
善い循環と悪い循環
業界とトップとその下の企業では同じ事をしても売り上げはトップにかなわない。
トップは資金が潤沢にあれば、それをサービスに回す事ができ、サービスがよくなれば消費者は、それを利用し、また資金が回収できる。
つまり良い循環が生まれる。
一方、資金が潤沢にない企業ではサービスに資金を回す事ができる金額が限られる。トップ企業と比べるとサービスに差がで消費者から離れられる。そして回収できる金額も少なくなる。
これではいつまでたってもトップに追いつかない。小倉氏は善い循環を起こす基本は「よく働く事」と説いています。
ヤマトでは労働組合があり長時間労働ができなかったので、労働生産性を上げる事に注力し、善い循環を作っていきました。
本の後半には車から荷物を下ろす5〜10分の時間の事も目を向けていった事が書かれているのですが細かなこの視点が生産性を作っていったのだろうと思います。
ヤマトほどの大企業であれば一人当たり1回の荷物の積み下ろしにかかる時間が5〜10分で1日それが10回繰り返された場合一人あたり1日1時間ロスがでる。これが相当数の人数になればかなりの時間になります。
結果的には車を集配しやすい様にトヨタにオーダーしたりしています。
業態が違えば経営の論理が違ってくる
本書ではスーパーとコンビニが記載されています。
物を売る事はどちらも同じなんですが、価値提供が異なります。
スーパーは安く売る事。コンビニは24時間営業で近くにあるという便利さ。
同じものでも戦略が全く異なります。どこに力を注ぐか意思決定の判断に関わるところが改めて勉強になりました。
どんなものにもメリットだけはない。またデメリットだけのものもない。
サービスを良くすれば、コストがかかる。
コストを下げればサービスは悪くなる。
最終的に現在の経営において、どちらが大事なのか見極める事が大事。どちらをやることで長期的に見た場合収益がでるのか。短期的な目線だけでみれば、どんなものにもメリットだけはない。またデメリットだけのものもないという事になるという事だと思います。
そういった面で見ると経営をしていると必ず売り上げが落ち、判断を迫られる場合があると思いますが小倉さんの先を見通す力というのが優れていたのが伺えます。
できる、できないを考える前にすべきかどうかを考える
小倉さんの意思決定のありかたがまさにこれ。
本書では「サービスが先、利益は後」として意思決定を迅速にしていた事が書かれています。
その基準がすべきがどうか。
全ての企業が同じ「サービスが先、利益は後」でやればいいということではなく、大事なのは「すべきかどうか」
先を見据えて「すべき事」をしっかりと作れていると意思決定にかかる無駄に悩む時間というのがなくなるのではと思います。
まとめ
直接、宅急便を利用する機会はほとんどないんですが、ネットで商品を購入した時など、かなりお世話になっている宅急便の歴史が非常に面白かったです。
また小倉さんは現在のヤマトのほとんどのサービス(クール宅急便、ゴルフパック、スキーパック、宅急便)を作られた方で、本当に先を見通す事に長けていたのだと思いました。
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