画像引用:amazon塑する思考
NHKeテレの「デザイン あ」や「にほんごであそぼ」、明治おいしい牛乳やロッテCOOL MINTのグラフィックデザインでも有名な佐藤卓さんが著者の本。
「デザインをしない」でおくという選択肢がない危険さ、何もしなくていいのに、つい何かしら施した装飾こそが「デザイン」だと思っている。
デザインしていないかのような見事なデザインをしたとしても会議ではまったく認められず、単にデザインしていないと思う。
デザイナーは勿論、どちらかというと前述しているデザインは装飾であると思っている経営者の方やデザインを知らない方に是非読んでいただきたい内容となっています。
明治おいしい牛乳やロッテCOOL MINTのパッケージデザイン作成の裏話的な内容も非常に面白い内容でした。
明治おいしい牛乳に実はキャラクターがいたなど、佐藤卓さんの葛藤が垣間見れます。
デザインは対処療法ではない
本書で
”デザインの危険性は、とにかく表面を美しくしてしまえるところにあります。つまり対処療法ならいくらでもできるのです。”とデザインを西洋医学の対処療法と非常にうまく例えています。
表面のみ変えたところで根本的な問題解決ができていないので短期的な数字が稼げても長期的な数字を生む息の長いデザインはできない。
しかしながら、一般的なデザインの認識は表面的な装飾と捉えられていることが多く、まだまだしっかりとデザインができている企業は少ない。
デザイナーもまた、装飾することがデザイナーの仕事と思っている方も少なくなく、本当の意味でのデザインというのが広がりづらい要因というのは、そこにもあると私自身も思っています。
デザイナーの自我と客観性
デザイナーであれば誰もが経験したことはあると思うのですが、自分がデザインしたものは作り込めば作り込むほど、そのデザインへの執着が高まり客観性を無くしてしまいそうな場面があります。
時には明らかにそぐわないデザインでも理論づけて正当化したり自我を抑えられないデザイナーもいます。
これもまた表面上のデザインだけ行なっている場合に起きることが多いと私自身は思っています。表面上のデザインだけだと何が正解なのかデザイナーとお客様で共通の解の認識がないからです。
課題や目的、戦略がなければデザイナーの自我や主観のデザインになります。逆もまたあり、お客様がデザイナーに指示だけを出すパターンなのですがこれもまたデザイナーとお客様で解が共有できていないのでお客様の自我や主観の強いデザインになります。
著者の佐藤卓さんはこの点を
”デザイナーは自分で試みたものを、まるで他人の仕事であるかのように客観的に見る訓練を常にしていなければなりません。”
と記しています。
作ったものを壊す勇気。デザイナーにはこういった、ある意味では執着心をなくすという事が必要だと思います。
競合の捉え方
よくある競合の捉え方は同様のサービスや商品などを比較して競合と捉える事が多いのですが佐藤卓さんがニッカウイスキーのデザインを行う際に検討した競合の捉え方が鋭いなと思いました。
ニッカウイスキーと同じ価格のもので、どんな事ができるか。それは映画を見てお茶して帰る、本を購入してランチを食べるなど、これと同様の価値がニッカウイスキーを購入した時にないといけない。
他社の同様の商品を競合としては、この「価値」を共有できないと思います。
しかしながら消費者としては確かに他社どうこうというより、同じ価格で体験できる価値を比較すると思います。
こういう価値観の共有を行う事でデザインの目指すべき方向性の足固めが少しづつ構築されていくものです。
まとめ
デザイナーにとって必要なスキルは多くあるのですが、本書はデザイナーとクライアントのデザインを評価する際の「ものさし」つまりデザインの評価視点を同じに近づける内容ではないかと思います。
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